「……クソッ。またダメか」
日番谷は舌打ちしながら、拳を地面に打ち付ける。
これで何度目かの挑戦か。
卍解を会得せよ、と総隊長に言われてからはや3日。だが日番谷はいまだに自らの斬魄刀である氷輪丸を、屈服させることができていなかった。
勝てないわけではない。現に何度か氷輪丸を倒したことはある。
だがそのたびに『それでは駄目だ』だの『まだ足りない』だのと言われ、あげく強制的に具象化を解除されてしまうのだった。
霊力か。鬼道の強さか。剣の腕か。速さか。しかし仮にも護廷十三隊の上位席官に所属する自分の能力が足りないとはとても思えない。
(一体何が足りないんだよ)
理由が分からないもどかしさで、日番谷はダンっと壁に拳を打ちつけた。
だがそんなことをしたからと言って結果が変わるわけでもない。屈服させるには、とにかく氷輪丸に自分を認めさせるしか方法がなかった。
「もう一回……やるか」
そう呟いて、日番谷は再び斬魄刀を構えようとした。
だが、しかし。
「――っ!!」
右手首に走った突然の痛みに、日番谷は思わず刀を手放してしまう。日番谷の手を離れた刀はカラカラと音を立てて転がったあと、やがて動かなくなった。
「……」
いつの間に、と言うべきなのか。それとも先ほどの戦闘のあと、すでに付けられていたのに、気づかなかっただけだろうか。ともかく日番谷の手首には、明らかに凍傷としか思えない傷ができていた。
どちらにせよ、氷輪丸の力によるものである、ということだけは確かだとは思うが。
(……何だってんだ、全く)
これも足りない『何か』のせいだというのか。
ならば、その『何か』とは一体なんなのか。
ズキズキと痛みを増していく右手首を見つめながら、日番谷は考えるが、答えが出るわけでもなく。それでもしばらく考えていると。
――ガラリ。
突然、扉が開いた。
予期せぬ出来事に日番谷は一瞬驚きを隠せない。だがそれ以上驚いたのはやって来た人物。
「雛……」
その気配を感じ、それに気づかなかった自分に少し苛立ち覚えながら、日番谷はそのものの名前を呟く。
おそらく任務の帰りだろうか、うっすらと額に汗をにじませて姿を現したのは、日番谷の幼馴染である雛森桃だった。
「日番谷君、だいじょ……う……ぶ」
扉から部屋の様子を見た雛森は、部屋の散々たる状況を見て、言葉を失う。
無理も無い。氷輪丸の力によってあちこちを凍らされ、あるいは雹を落とされた室内は、もはや見る影もないほどにあれはてていたのだから。
「…………」
「雛森」
放心したまま動かない雛森に、さすがに少し心配になった日番谷は声をかける。だが返事は無い。日番谷は扉の方へ近づいて、さらに声をかけた。
「――雛森」
「え。……あ。ご、ごめんね。ちょっとびっくりしちゃった」
「……いや。大丈夫か?」
「うん、大丈夫……って、日番谷君!」
「な、なんだよ」
「何だよじゃないでしょ! その手首! 怪我してるじゃない!」
「たいしたことねえって」
「嘘! 日番谷君がそういう時って、大抵無茶苦茶痛いときなんだから!」
先ほどまでの放心ぶりが嘘のように、雛森は日番谷に詰め寄り、そして。
「すぐに四番隊に行かなきゃ!」
そう言って、日番谷の手(無論左手)をつかみ、有無を言わさず日番谷を連れて行ったのだった。
あうう〜。文章になってない……(T_T)
いきなり雛ちゃん登場。でも日番谷君はよほどのことがないかぎり四番隊には世話になりたくないと思ってそうなので。雛ちゃんが引きずって連れて行かないと!
しかし一応これ日×織小説なんだよな……織姫……出てこないどころか、日×桃だよ、これ……(汗)
まあ日桃はベースにあるということで。むしろ日→桃かもしれませんが。
※注 斬魄刀が具象化状態を強制的に解除できるかどうかは知りません。が、氷輪丸ならできるかと(爆)。だって(氷雪系)最強だし!