カードを片手に、探し始めてから、十数分。
「お。もしかして、アレか?」
ディアッカは目当ての人物らしき後姿を発見した。
念のため、もう一度カードに貼られたシルエット写真と比べてみる。
着物に似た衣装、腰には長いリボンをつけ、そして頭のポニーテール。
(…………。ってことはやっぱりミリィじゃないってことだな)
少なくとも彼女はポニーテールにするほど髪は長くなかったはずだ。
こうして実際に目にするまではもしかしたらという期待もあったのだが、どうやら違うらしい。
けれどもディアッカはそれに落胆することはなく、むしろニヤリと笑みを浮かべ、
(ま、でも。探してる連中が全員男ってことは、真ん中にいるのは全員女ってことで。お近づきになってもバチは当たらねえよな)
そんなことを思いながらかの人物へと近づき、そして。
「Treak or treat!!」
その背中に向かって唱えた。
言われた人物は一瞬びくっとしたが、すぐに意を決意したかのようにくるりと反転する。
ポニーテールがさらりとひるがえり、現われた顔にディアッカが驚いて叫ぶよりも早く、
「……つ、強気に本気、無敵に素敵、元気に勇気!怪盗ミリィ、神に遣わされ華麗に参上!チェ…………ってヤダ!ディアッカ?!」
少女――ミリアリアは、若干躊躇いがちに、それでも言い始めてからは一気にまくしたが、最後は驚愕の声に変わる。
ディアッカの方も、あまりに予想外の、いや予想というか一度は期待していたのが諦めていた展開に、衝撃を受けていた。
(え、ええ?!ち、ちょっと待て、まさか本当にミリィ?夢じゃないよな?)
思わず手を伸ばして顔をつねる。痛かった。どうやら夢ではないのは確からしい。
「…………」
「…………」
お互いに顔を驚きの表示に固めたまま、しばらく見つめあう。
やがて。
「ふふふ」
「アハハ……」
ディアッカとミリアリアは、どちらかともなく笑い出した。
「そ、その格好……ヤダ……」
「人のこと言えるのか?」
「確かに。でも、悔しいわね」
「え?」
突然我に返ったように呟いたミリアリアにディアッカは何が?と問い返す。
「合言葉よ、合言葉。失敗しちゃったのよ、私。」
「え?……って、ひょっとして、さっきの?」
「そう。アレ、最後に『チェックメイト!』って言わなきゃいけなかったのよ。でも、まさかディアッカが来るとは思わなかったから、驚いて言い損なっちゃったわ」
くすりと微笑みながらいうミリアリア。
その表情は妙にオトナっぽく見え、何故かディアッカは少々寂しさを覚えた。
「んじゃ、もう一回言ってみれば?」
思わずディアッカが言うと、ミリアリアは首を振って苦笑し、
「ダメ。『Treak or treat!!』って言われた瞬間に、コレを押さなきゃならなかったから」
「これは?」
「特製のセンサーみたい。押した瞬間にアレが反応して、録画するんだって」
言ってミリアリアが指を差し出した場所にあったのは、会場中を飛び跳ねる無数のハロだった。
「ってことは……」
「そうよ。不本意だけど、アンタの命令に従うしかないわ」
「……へえ。じゃあ、何聞いてもらおうかな〜♪」
「言っておくけど、変な命令したら後でどうなるか、分かってるわよね?」
じろりと睨んで切り返すその姿に、こんなところは相変わらずだなとディアッカは思わず微苦笑する。
彼女が変わってない、そんな小さなことが、嬉しい。
「?何よ?」
いつまでも微笑んでいるディアッカの顔を、訝しげな顔で覗くミリアリア。
さらりと、結い上げた髪が下に流れた。
「ディアッカ?」
「……なんでもない。んじゃ、早速」
――――ミリィに命令!俺にエスコートされなさい!
ハロウィン話、最終話です。最後はちゃんとディアミリになりました。よかったよかった。
本当は絵で描けたら一番いいんですけどねー。すみません;皆さんの頭の中で補完してください(苦笑)
ミリィにウィッグは反則かなあとも思ったんですけど。でもディアッカさんに合うコスを考えたらこれくらいしか思いうかばなかった;何より後姿でミリたんと気がつかせないためには、これくらいしないといけないかなーいうことで、勘弁してください。
ちなみに2人のコスは明記してませんけど、分かりますかね?分からなかったらごめんなさい;何とか想像してください(爆)