何があっても驚くまいと思っていた。
どんなのが出てきてもあせるまいと思っていた。
だが、しかし。
「ようこそ、いらっしゃいませ」
パーティーの会場であるここクライン邸に到着したディアッカは、にっこり笑う聖女の前に言葉を失った。
「…………」
「あら?どうしたましたの、ディアッカさん?」
ご気分でも悪いのですか?と、聖女――ラクスが小首をかしげた。
そうだ。これは確かにラクス・クラインだ。
我らがプラントの誇るべき平和の歌姫であり、現在はプラントの全てを束ねし最高評議会議長。
……のはずなのだが。
「ディアッカさん?」
「あ、い、いや……あ、あのですね……それ、一体……何でしょうかね?」
「それ?」
「その……服……あ、いや、お衣装…………」
確かにハロウィンといえば仮装するのが基本だ。
幼い頃に何度か参加したパーティーでもディアッカは様々な格好をして参加したし、いろんな仮装を見てきた。
けれど、ラクスのこの格好はそのどれにも当てはまらない。
「これですか?うふふ。何だと思います?」
何やらやたらと浮かれた様子でラクスはディアッカに尋ねる。
尋ねられたディアッカは仕方がないので考えるが、しかし。
(ピンクのミニドレスにティアラと白い手袋、それに杖って……何だ?)
杖を持ってるなら魔女かとも思えるが、だとするならばドレスの色が変だ。
むしろウエディングドレスとか言ったほうがしっくりくる。けれどそれでは杖はいらない。
だとするならば、これは一体なんだろう。
思考と記憶をフル回転して、ディアッカは考えた。
しかしやはり、答えは出ない。
ラクスはラクスで、ディアッカが当てるのを楽しみしているかのように、ニコニコと笑って見ているだけだ。
このまま何もしないと永遠にこの場所に足止めを食らわせられるかとディアッカはやれやれとため息を1つつき、目の前の少女の名前を呼ぼうとした、その時。
「――――ラクス。そろそろ次の参加者がくるよ」
ふいに、ラクスの後から声が聞こえた。
聞き覚えのある声だ。というか、思いっきり知り合いの声だった。
――――けれど。
「あら、もうそんな時間ですの?」
「そうだよ。だから早くしないと。あ、ディアッカ、お久しぶりです」
同じ軍内にいるのに、部署が違うと中々会えませんね、などと微笑んで言うその声の主は。
「キ、キラ!お前まで何なんだよ、そのカッコは?!」
そう、キラ・ヤマトだ。ラクスの恋人にして、異例の抜擢(というかかなり無茶だ)でザフト軍に入隊した人物。
ディアッカとも浅からぬ縁があり、変な意味でなくその関係を語るのは、互いを結びつける直接の関係がないので結構ややこしかったりもする。
一番簡単なのは、ディアッカの元同僚の親友という説明なのだが、ともかくそのキラ・ヤマトが、これまた恋人に負けず劣らずの扮装をしていたのだ。
まるで大昔の人物のような、白いスカートとサンダル、おまけにラクスと同じく杖という、この服装は。
「何って太陽神、だっけ?ラクス」
「もう、キラったら。……でも、バラしてしまっては仕方ないですわね。そうですわ、太陽神アポロンです。そして私は戦いの女神アテナ」
「…………は?」
「ラクスってば。それだけじゃ分からないよ。ちゃんと『かみちゃま』って説明してあげないと」
「か、かみちゃま?」
「あらそうでしたわ。『かみちゃま』のアテナなんですの。あいあむ・ごーっど♪」
「………………」
何やら2人で盛り上がるキラとラクスを前に、ディアッカはもはや何も言えなくなってしまった。
ふと、その脳裏に浮かんだのはラクスからのメール。
最初のメールに返信して、その後に送られてきたメールには、日時と場所の詳細の他に、こんな風に書かれていたのだ。
『なお、ハロウィンに付き当然ながら仮装での参加が条件となりますが、その衣装は全て私が準備させていただきますので、ご安心くださいませ。最高のコスチュームをご用意いたしますね。楽しいパーティにいたしましょう。それでは、合言葉はあいあむ・ごーっど♪』
最高のコスチューム。
楽しいパーティ。
そして、あいあむ・ごーっど……?
「も、もしかしなくても、それって、どっかのキャラクターの衣装……?」
ディアッカの問いは。
最高にして最強の2人の微笑みによって、肯定された。
そして。
「さあ、ディアッカさんも衣装に着替えてくださいな」
そういって、ラクスは家の扉を開けたのだった。
じ、時間がなーい!!!……というわけで急遽仕上げました。ディアミリどころかキララクです。文章とかつながりとかがもうメタメタです。ごめんなさい( ̄□ ̄;)アーウー
機会があれば書き直します。大筋はそのまんまなんだけど。
ラクス様とキラ君のコスを最後まで悩んでたのが時間が足りなくなった原因なんていってはいけない;
ディアッカさんの衣装は最終話にて。ていうか絵チャでの衣装を着せたいがために考えた話なんで、それに決定なんですけどwwwww