赤。紅。朱。
これらは全部、『あか』と読む。
橙も、桃も、桜色も、広い意味では『あか』色といえるかもしれない。
世のなかには『あか』を表す色がたくさんある。
燃えるように。太陽のように。――そして、血のように。
『あか』という色を表現する言葉もまた、いくつかある。
そんな風に、『あか』色はこの世にありふれている。
だから私も以前は全く意識していなかった。
けれど、ある日を境に。
私にとって『あか』とは特別な色になった。
『あか』はつながりの、色。
あの人と私のつながりの、色。
その人の名は、以前から知っていた。
古代の地球の神話で、神様が使っていた盾と同じ名の、MS。
もしくは『正義』を冠され、プラントを核攻撃から守った、MS。
この二体のMSを駆り、プラントと地球の間に起こった戦争を終戦に導いた一人と言われる、アスラン・ザラ。
ザフトの……いや、世界の英雄だ、知らないわけはない。
ちなみに私のMS――ザクも、紅い色をしている。
かつてプラントを守ったMSと同じ色。
確かに誰かにそれを言われたことはあったけれど。
でもだからといって私がそのことを意識したことはなかった。
そのMSのパイロットのことは、多少は気にはしたけれど。
それはもちろん大戦の英雄ということだったから。
一度くらいは会ってみたいな、という軽い気持ちだった。
あの日までは。
今だから、思う。
あの日、彼と出会わなければ。
私は『あか』を特別な色なんて思うことはなかった。
彼と同じ色のMSでよかったなんて思うことはなかった。
それはとても予想外の出来事だった。
まさかいきなりミネルバに乗り込んで来たMSのパイロットがあのアスラン・ザラだなんて。
今思い出しても驚きの出来事だ。
大戦の英雄は、出会ってみれば結構普通の人で。
女の子の扱いに長けてるのかと思ったら、彼女らしき人の一言一句に振り回されていたりするし。
どんなことにも冷静で、淡々とこなすのかと思ったら、結構無鉄砲に動いていたりした。
でもそんな人だったからこそ、私は彼を好きになった。
完璧な英雄じゃない、私たちと同じ、一人の人間の彼だからこそ。
彼がミネルバにいたのはほんの一時だったような、とても長い時間だったような。
その間に色んな出来事があって、その後にも色んな出来事があって、彼のいたオーブや地球と、私たちのプラントが戦争になって。
2度と会えない、会えても敵同士だと覚悟した。
でも、けれども。
またしても彼は私の予想もつかない登場の仕方で、私たちの前に現れた。
かつてのように、『あか』のMSを駆って。
そして、今。
ミネルバには、『あか』のMSが二つ、ある。
私にとって、特別な『あか』が。
初アスルナ。一応、アス←ルナです(より厳密に言えばルナ→アス×カガだったりしますが)。
微妙な感じです。ルナマリアはこんな性格ではない気が……(汗)。